カメラの八百富|「鉛入りガラス」と「エコガラス」

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㊥カメラ担当係 "S" です。本日もご覧いただきありがとうございます。

今日のお話は、「鉛入りガラス」と「エコガラス」について、本音は
「このヤロー、RoHS指令」

ってな感じの雑感です。

私、技術者でもなければ学生時代に光学を勉強したわけでもなく、またガラスの専門家でもないことをご了承の上、お進み下さい。本文中には、技術的、学術的に誤った部分もあるかもしれません。単なる一中古カメラ店のスタッフのつぶやきというレベルでお読みいただけたらと思います。

先日もこのブログで「ほえて」いましたが、最近はなんでも「ECO」。
どんな商品でも「ECO」とつけりゃええのかってな状態、もちろん環境に配慮してるのでしょうが、
やや脱線ぎみのアプローチが見受けられる今日この頃です。

我「写真」業界も同様。
「デジタル対応」ってな言葉が、そこらじゅうの商品のパッケージに溢れています。

例えば、三脚に「FOR DIGITAL」。
はあ?三脚に、デジタルもアナログもあるか~!

カバンでも「デジタル対応」、いったい何がデジタル対応なのでしょうか?
パソコンが入るって意味でしょうか?
それとも、メディアを入れるポケットがついているってなことなのでしょうか?
でも、いままでそこにフィルム入れてたような気もするのですが。

また、フィルターも「FOR DIGITAL」の時代。
まあ、これはガラスの縁に墨塗りしたり、新コーティングや両面コーティングってなことで付加価値が付けられていますが、デジタルカメラ上での現実的な効果はどうなんでしょうかね?

私のつたない知識では、レンズを通り抜けてきた光がセンサーで反射し、その光がセンサーと後玉でいたっり来たりし、画質に影響すると認識しております。
レンズの一番前に付いているフィルターと一番奥のセンサー(デジタル)との間に積極的な因果関係を見出すのはかなり苦しいと思うのですが。

つまり、一番最初に光を通すレンズとして、いかに邪魔せず「すーっと、反射なく通す」かが重要で、その効果は別にデジタルでもフィルムでも同じだと考えます。(フィルムでも同じ効果が得られる)
いかがなもんですか、ちょっと、デジタルって表現が勝ちすぎかなと思う次第です。

そして、この業界内でも「ECO」って言葉が。
例えば、「エコガラス」ってな言葉がカタログやWEBページを飾っています。
でも、これは他業界の販売促進を兼ねたような「経済ECO」というものではありません。

原因は「RoHS指令」なるもので、メーカーとしてそれに従わざる得なくなったからです。
本音のところでは、メーカーとしては「エコガラス」化したなかったと思いますが、今、ヨーロッパの法律を起点として、「鉛ガラス」が撲滅され、「エコガラス」化が進行しています。

では、「エコガラス=鉛レスガラス」ってどんなの?
その差を非常に判別しやすいレンズが入荷しましたので、まず下の写真をご覧下さい。

NIKON の Ai Nikkor 20mm F2.8S のエコガラスモデル入荷しましたので、新旧を比べてみました。

ai20mmf2.8s-001.jpg左がエコガラスの新型。右が従来品です。
一目瞭然、コーティングの色の違いが見てとれます。
ニコンのエコガラスレンズのコーティングはどのレンズもほぼこんな感じの「薄い緑」色で、簡単に判別できます。

個人的には、従来型の紫赤系のコーティングの色のほうが「ありがたみ」があり好きなのですが。
エコガラスの方はあっさり系で、見た目の雰囲気がちょっと安物くさいのが難です。
角度によっては、単コーティングレンズのように感じてしまいます。(下の写真ご参照)


ai20mmf2.8s-002.jpg「エコガラス」とは「鉛」が入っていないレンズのことで、「鉛」のかわりに「チタン」などの金属を入れています。

光学技術者の方に言わせると、「鉛」は安くて高品質の「高屈折ガラス」がつくれる最高の材料だそうです。それを使えない今、ガラスを薄すくすることで屈折率 を高めたりして性能を確保しているそうで、光学的には「青」色の透過率が数%落ち、その分コーティングでカラーバランスを整えているようです。だから、上記のように見た目の色が異っているのです。

その昔、Ai Nikkor 50mm F1.4S のレンズで写りに差があるかどうか試したことがあります。
1本は「最初期」のころの番号の製品、2本目は「鉛入ガラス」の最終番号、そして「エコガラス」型。
しかし、全く違いを判読できませんでした。
いずれの時代のレンズで撮影しても全く同じ写り。
時代やコーティングの色の差、鉛の有無による差は「ない」というのが結論です。

その昔、ニコンの技術者の方に質問しました。
「どーして、ロットによってコーティングの色が違うのですか?」

お答えは次の通り。
「我々はメーカーだから、同じ性能が出せるならより安いコストで商品をつくることを考えるのが基本」
「性能とコストを天秤にかけることはないが、同じ性能をだせるならより安い材料で物をつくる」
「レンズの硝材が変われば、色の透過率が変わるからコーティングで補正する。結果、見た目が変わるだけ」

ということです。
たぶん、レンズ構成の変更を伴わないレベルでの仕様変更の範囲内では、大した差は発生しないということだと思います。
今回の「エコガラス」化についても、根本的な設計変更ではなかったためでしょうか、ほぼ同じ性能を踏襲できたようです。
まあ、中古カメラ的には「面白くない」結果かもしれませんね。(笑)

最後に、なんでエコガラスになったかというお話です。

このエコガラス化は低コスト化の要請からではありません。
EU(ヨーロッパ)の環境規制「RoHS指令」に基づく対応の結果です。
簡単に言えば、EUが鉛を使った製品の域内での販売を禁止するといったからで、仕方なく無理やり使いたくもない「鉛レズレンズ」=「エコガラス」に変更した、というのが本音ではないでしょうか。

(ご参考)
RoHS(ローズ)は、電子・電気機器における特定有害物質の使用制限についての欧州連合(EU)による指令です。2006年7月1日以降は、EU加盟国内において、以下の物質が指定値を超えて含まれた電子・電気機器を上市(難しい言葉です)することはできなくなりました。
  ・水銀・ カドミウム・六価クロム ・ポリ臭化ビフェニル・ポリ臭化ジフェニルエーテル

この鉛が該当したわけです。適用外の鉛含有製品もあったのですが、レンズは別に鉛を使わなくても代替が可能ということで規制対象品となり、域内に持ち込めなくなったわけです。ガラスの中の鉛なんか、廃棄されてもガラスから染み出てくるようなものじゃなく安定しているので、自然環境に与える影響は少ないかと思うのですが、なんか対象範囲となってしまいました。(魚釣り用の鉛の重りの方がよっぽどあぶないと思いますが?)

まあ、この規制のせいでこの業界大きく変わりました。

これが理由で無くなった製品が沢山あります。
例えば、有名なところでFM3A。

ペンタプリズムは鉛ガラス、エコガラス化で大きさが変わればトップカバーが変わります。
鉛はガラスだけでなく、塗料にも含まれていますから、裏ブタすらそのまま使うわけにはいきません。
その他、使用している部品、一点一点の材料評価が必要となり、追加生産しようと思うといちから設計変更が必要となります。
そりゃ、いまさら無理ですよね?もうそう売れるわけではない商品に、そこまで投資できません。

さらに、ニコンさんはRoHS指令を契機に、環境対応にシフト。
「鉛レス」化を社是にしてしまいました。
これで、マニュアルフォーカスのレンズから、例えばF5ファインダー類、何から何までアウト。
いまさら設計変更しても売れないものは、全部生産完了。最後は、廃棄処分とあいなりました。

じゃ、今いくらかマニュアルフォーカスレンズが残っているのでは?ということになりますが、それは全て「エコガラス」化されています。理由は売れるから、その用途はアマチュアではなく、産業用途(計測機など)に一定の需要があるからのようです。

時代はちょうど、フィルムからデジタルに完全移行し始めた時期。
あまりにもタイミングが合いすぎたようです。
RoHS指令が無ければ、もう少しゆっくりと銀塩関連商品は終息したかなと思う次第です。

そういう意味で
RoHS指令、馬鹿野郎お前のせいだぞ!わかってるか!


まあ、そこが今日のオチなんです。

+++中古カメラ担当係+++


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このブログ記事について

このページは、㊥カメラ 担当係が2010年1月22日 00:07に書いたブログ記事です。

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