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㊥カメラ担当係"S"です。ペンタックス・スポット露出計 いわゆる「I型」 PENTAX SPOT EXPOSURE METER 最初期型 が入荷しました。
ペンタックスのスポットメーターの最初期型。
いわゆる後付けで「I型」と呼ばれている最初期型で、正式名称は日本語で「ペンタックス・スポット露出計」、英語で「PENTAX SPOT EXPOSURE METER」として販売されていました。
多くの「I型」と呼ばれている商品は、後継機の「II型」が発売された後、便宜的に「I型」と世間が呼ぶようになった物がほとんどで、はじめから「I型」として世に登場した製品はほとんどありませんね。
と偉そうなことを書きながら、ふと疑問が?
えっ?そういえば、「III型」と「V型」って取り扱った記憶があるのですが、「II型」や「IV型」って見たことがあたんだろうか?
「V型」は、これなんですが、
トップカバーに「ASASHI PENTAX SPOTMETER V」のプレートが貼ってあって、色はライトグレー。電池は1個だけで動く、というのが一般的見分け方。
もう一方の「III型」は、色が濃い茶色。特にIII型と表示されているわけでなく、「ASAHI SPOT METER PENTAX」のプレートがあって、006Pと水銀電池の二種類の電池を使うので、今、積極的に使うには.........、という感じなんです。
ということで、この辺の歴史にはついては、また後日調べておきたいかなと思います。
では、本題の初期型のスポットメーターを見ていきましょう。
姿は上の写真通りなんですが、ファインダー部分がグリップかと勘違いしそうな感じ。写真を180度ひっくり返しますと、自然な姿かと思わせるフォルムがなんといっても特徴。
なんとも不思議な構造物なのですが、そこがいいところ。個人的には、こういうクラシカルといいましょうか、古い工場の中央制御室みたいな物品が大好き。
ブリキのおもちゃとは言いませんが、(言ってます)これが、正確な露出を測ることができる装置とは到底思えないところがグーで、「へ~、こんな物があったんだ」という産業の歴史博物館的価値を感じるところです。
もちろん性能は最新式で、当時のカタログには「世界最初の高精度の高級露出計」と謳われており、従来の写真用途のみならず「映画界・テレビ界」に向けて開発された露出計と紹介されています。
- 大きさ 長さ135 X 幅62 X 高さ130mm
- 重量 420g
- ファインダー 全視覚21度 倍率1.5倍 上下正像・左右逆像
- 受光角 ファインダー中央3度
- 受光体 Cds電導体(硫化カドミウム)
- 受光体電源 水銀電池MP型(1.3V)1個 積層乾電池BL-015(22.5V)1個
- 測定範囲 ライトバリュー 2-18(ASA100) ASA感度 3-6400 絞り目盛 F:1-128 シャッター目盛 8秒-1/8000秒
- 測定方式 反射光式・高低2段切換・ライトバリュー直読式
- 測定誤差 ±1/3絞り以内(ASA規格)
ウエストレベル式のファインダー接眼部
スポットメーターといえば「アイレベル式」、現在の常識なのですが、何故かこれは「ウエストレベル式」。当時の主たる撮影スタイルが影響しているのでしょうか。二眼レフ?なのでしょうか、それともスプリング?、いやそれともテレビ界や映画界への売り込みの関係?、その辺も関係しているのでしょうかね。
時代の要請だったことだけは確かでしょう。
ライトバリューの確認
そのファインダーをのぞきますとこんな感じ。
上段が「H」時のライトバリューの目盛、下段に「L」時の目盛が見えます。
「H」と「L」の切り替えは、このボタンで。軽く押し下げると「H」がスイッチが入り、もう少し深く「パチン」と手ごたえがあるまで押し下げると「L」の測光状態となります。
ライトバリュー直読式
上で読み取ったライトバリューの数字を憶えておいて、先端のオレンジ指標に一番外側のライトバリュー目盛リングを合わせます。そうしますと、その内側のリングとの読み合わせで、絞りとシャッタースピードの組み合わせを知ることが仕組みです。この考え方は、後のスポットメーターV型も同じで、超アナログ式ながら大変直感的に操作できる素晴らしい仕組みです。ただ、びっくりは「最高シャッター速」がなんと1/8000秒、さらに絞りが「128」まであることです。当時それだけのシャッタースピード制御できる機械があったのでしょうかね?どういう用途が想定されていたのか知りたいな~。
電池は低輝度と高輝度の二系統
底板を外すと、電池ボックス?といいますか、内部が露出します。
ただ、この当時の露出計は「セレン式」が主力。電池のいらないセレン式は経済的という感覚が強かったので、説明書の書き方には腐心の跡が沢山あります。
- 高性能の裏返しだよ
- 水銀電池は長持ち。使い方にもよるが約1年間大丈夫。無くなる時は、急激にダメになる。
- 積層電池は、使おうが使わまいがだらだら無くなるので要注意。3~6カ月で交換する必要がある
また、バッテリーチェックの方法もユニークで、
- 高輝度部で、LV10の物体を選び、その物体を外さないように低輝度に切換え、指針がLV10を指していれば電池はOKだよ
- もし、低輝度部でLV10より低い数値なら、積層電池が消耗
- もし、低輝度部の指示がLV10を超えて指針が振り切れたなら、水銀電池が駄目になっている
- 両方の電池が同じように消耗することはほとんどないので、この点検方法で確実に消耗を判断できる
とのこと。
比べるべくもない話ですが、原発の多重防御の考え方とはまったく相いれない、民生商品らしい考え方ではあります。といって、現在なら「価格コム」あたりで厳しく指弾されそうな仕様ですね。そう、肝心なことをわすれておりました。ここまで読んで頂きますとお分かりかと思いますが、この2個の電池は、それぞれ独立して電源を供給している形であるとともに、いずれももう電池が製造されておりません。つまり、「点検ができていない = 作動するかどうかわからない」 状態であるということはご理解下さい。ただ、このように水銀電池側に液漏れ跡がありますので、
あまり期待はいただかず、まことに勝手ですが「形状美」だけのご購入でお願いします。
スポットメーターの弱点
スポットメーターなり、スポット測光の弱点はあくまでも「反射式」の測光であるということ。
どこを測るかで全然異なる露出値を指し示すことになるだけでなく、その測る被写体の色(白黒)によっても露出値が異なります。いわゆる、ハイシャドー・ハイライトとか呼ばれる話で、白黒の光の反射率が異なることに起因する問題です。
この辺の話は、専門書で詳しく調べていただくのが一番なのですが、もう一点の注意事項があるのです。
一眼レフ内蔵のスポット測光では全く意識する必要はないのですが、このような外式のスポット測光では、ご使用になるレンズが望遠になればなるほど、この露出計がスポット測光から単なる平均測光の反射式露出計になり下がることを、ちょこっと頭に置いておいて下さい。
参考までに、35mm判におけるレンズの写角と受光角3度の相関関係図をご覧ください。
200mm以上となりますと、もうスポット測光と呼べるような関係ではなく、実際上では85mm位までがスポット測光的な取り扱いの限界かなと思います。
付属品はケースと取扱説明書
実は、このケースの内側が「18%標準反射板測定法」に対応した18%反射板という仕様になっております。実に、ペンタックスらしい配慮です。
ということで、未点検の商品となりますが、姿が姿ということで、「形状美」と「こんなものがあったという産業歴史的価値」でもってご検討下さい。(あつかましいですが、現状渡し・返品不可の扱いで)
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