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㊥カメラ担当係"S"です。
CHINON チノン CP-9AF マルチプログラム MULTI-PROGRAM Wズームセット(28-70mm/70-210mm)が入荷しました
ご存知のように、この手のカメラは㊥カメラ担当係"S"が最も大好きなカテゴリーでありまして、使い心地や機能などの真面目な切り口とは一切無縁、いわば「砂漠のオアシス」みたいなもんです。
「俺、なんでこんなもんにひかれたんだろう......」
まあ冷静になってよーく考えればわかる話で、なんのこっちゃか全然関係ありませんが「スキー場でのサングラス越しの出会い」みたいなもんです。
このブログにご来店の皆様なら、「中古カメラ屋」を出た時、
「なんで俺、紙袋をぶらさげてるんだろう...」
と、ふと我に返られたご経験が一度や二度ぐらいあろうかと思います。
そのような時、お供になっている可能性のあるカメラの一つがこれ。
今日、ご紹介するカメラ 「チノン CHINON CP-9AF MULTI-PROGRAM」です。
このカメラが発売されたのは1988年7月。
ニコン NIKON F4 / F4S 1988年12月
ニコン NIKON F-801AF 1988年6月
キヤノン CANON EOS 650 1987年3月
キヤノン CANON EOS 750 / 850 1988年10月
ペンタックス PENTAX SFXN 1988年11月
ペンタックス PENTAX SF7 1988年9月
ミノルタ MINOLTA α‐7700i 1988年5月
オリンパス OLYMPUS OM101 1988年2月
京セラ KYOCERA 230-AF 1986年12月
こんな機種たちが全盛(一部除く)だったころです。
めちゃめちゃ売れた機種もあれば、まったく売れなかった機種、あるいは値段で売り込んだ機種などが混在するのですが、間違いなくこのカメラは全く売れずの部類、今や、ほとんど市場で見かけることはありません。
が、実は結構すごいカメラなんですね。
その第一の特徴が、専用のチノンAFマウント。なんとレンズにコアレスモーターを内蔵する方式を採用した35mmAF一眼レフなのです。他社のほんとんどが、本体側駆動(ボディー内モーター)方式であったのにもかかわらず、チノンという一眼弱小メーカーがレンズの大きさや形をかえることなくレンズ内モーター方式を実現したことは、もっと評価されてもよかったのではないでしょうか。
でも、そのころの日本は「ミノルタ・ニコン・キヤノン・ペンタックス」の4社で市場を占有していた時代。オリンパスですら負け組という状態で、残念ながら他のメーカーが入り込める余地などなく、チノンという会社も撤退せざるを得ない運命にあったわけです。
ゆえに、チノン製AFカメラはこれ一代でもって終了、しかもチノン最後のレンズ交換式一眼レフとなった歴史的カメラというわけです。
もちろん厳しい戦いを挑むわけですから、メーカーとしてはなんとかしようとあの手この手の戦略を考えねばなりません。その一つがレンズマウントで、マウント形状をよくご存知の方は上の写真からすぐにお分かりになろうかと思いますが、「専用のチノンAFマウント」といいながら、実は「ペンタックスKマウント」となっています。
もちろんMF(マニュアルフォーカス)となりますが、ペンタックスのKやKAレンズ、あるいはリコーのRKマウント(リコーKマウント)レンズが併用できるように設計されています。
もともとMF一眼レフを作っていた時代からKマウントだったことも大きな要因ですが、レンズ資産を継承できるようすることで、「Kマウントユーザーも取り込めたらいいな」との思いからこの世に出たカメラだったわけです。
発売当時、㊥カメラ担当係"S"は学生アルバイトとしてこの八百富で働いていたのですが、このカメラに関しては全くもって見たことがない、カタログとのかイメージも全くありません。たぶんなんですが、日本国内ではほぼどこも扱っていないような状態であったものと思われます。同じ時代に発売されていたコンパクト一眼「チノン ゼネシス GENESIS」は沢山売った記憶がありますから、うちの店としてはチノンさんと取引していたにもかかわらず、どこも非常に冷たい扱いをしていたようです。
その辺はメーカーさんも同じで、そう売れなくてもいい、でもコンパクトカメラを沢山売っていくためには「AF一眼もあるメーカーだ」という事実も必要だった、そんな位置付けのカメラであったものと思われます。
では、カメラを詳しく見ていきましょう。
カメラ全体のフォルムは、それ以前に発売されていた「CP-7m MULTI-PROGRAM」とよく似ていて、ほぼ大きさや重さを変えることなくAF化されました。ただ、レンズはコンパクトに作り上げたのにもかかわらず、なんで本体内にAF駆動系の部品を入れ込む必要がなかったのに大きさが変わらなかったの?という視点では、デザインの「斬新さ」や小型化の要請に欠けるものとなってしまっています。
その辺は開発期間の短縮をできるだけ短くしたかった事情からでしょうかね。まあそれでもよくチノンという裏方系会社がここまですごいカメラを作り上げたこと自体は、素直にほめてあげたいと思います。
で、実際にこのカメラを動かしてみると、なかなかキビキビしたレンズの動きに脅かされます。
当時のCANON EOSのレンズ内モーターと変わらないほどの、非常にスピード感のある動きで、ボディー起動の他のカメラより(どこかのSAFOXとはよう言いません...失礼)、よっぽどうまくオートフォーカスが合焦します。
AF方式は、CCDラインセンサーによる位相差検出方式で、AF補助光を本体に内蔵していますので暗所も補助光の届く範囲でAFが作動します。
面白い機能が、「キャッチインフォーカス」で、AF機構と連動して合掌すればシャッターがおりるという機能が搭載されています。
(ご参考)
当時、オリンパスさんは「ゼロインフォーカス」という呼称で同じような機能をOM30の時代に実現しています。現在は、ペンタックスさんが同じ呼称「キャッチインフォーカス」で同じような機能を搭載しています。